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ジャンルごちゃ混ぜSSブログ* テニプリ(リョ桜)* イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ) イナイレでは一秋中心にいろいろ 感想とか好き勝手 今はとにかく一之瀬が好き
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大丈夫?
そう言って延ばされるその手のひらに
ああ、私の胸は騒ぎだす。


**********

想い、内にあらば

 

 

 

 

 

 

 

 

いやな予感はあたるもの。

私はたった14年の人生の中で、こんな言葉をいつのまにか学んでいたようだ。
今まさに、それが当てはまる事が自分の身に起きて
なんで、あのとき…といまさらしても仕方ない後悔にため息をついてしまう。

かすかに消毒の匂いのするその部屋の丸い椅子。
私はそこに座らされ、体温計を渡される。
ああ、これで数字で見てしまったら、自覚してしまって嫌だなあとぼんやりと思う。

「ほら、これで計りなさい」

少し赤みのつよい茶色の美しい髪をさらりと肩から滑らせながら、夏未さんは私にそれを差し出した。

「…でも、大丈夫なんだけどな」
「駄目よ。そんな赤い顔して」
「夏未さん、でもまだ皆のタオルを洗ってないし…」
「今、音無さんがやっているわ」
「でも、たくさんあるし」
「いいから!」

とうとうしびれを切らしたらしい彼女は、無理やり私の手にそれを持たせると
腕組をして、私の前に仁王立ちになった。
体温を測るまでは許さないわよ、と彼女は無言でそう言ってくる。
ああ、これって結構怖いかも。
夏未さんが怒ると委縮する、我がサッカー部の面々を思い出し
私は吹き出しそうになりながら仕方なくジャージの下から手を差し込んでそれを脇にはさんだ。

「よろしい」

満足げな声に顔を上げると、彼女の白い手が私の額に降りてきた。
ひんやりと感じる気持ちよさに、思わず目を閉じると
私の瞼の裏は、燃えるように赤く見えて、ああ、私は今燃えてるなあなんてぼんやりと思った。

「…やっぱり、良くないわ」

揺れる声に目をあけると、綺麗な顔が不安げに目を細めていた。
ピピピ、という電子音に覚悟を決めると
それを手にして、私はやっぱり計らなければよかったと後悔した。

「38度7分…」

いつのまにか、私の手から奪われていた体温計は
夏未さんの手の中にあった。
数字を読み上げた彼女は、私をギロリと睨んだ。


「こんなに熱があるのに、無理して!」
「で、でも」
「でももへったくれもありません!すぐに帰りなさい!これは理事長の…」
「な、夏未さん…」


いつもの剣幕に、さすがにたじたじとして両手をあげてしまう。
慌てて立ち上がろうとした私の目の前の景色は、急に歪んでくらりと鈍い感覚が頭の中を駆け抜けた。


「アキ!」


聞き間違えたのかな?
一之瀬くんの声がする。

そんな事をぼんやりと思ったのもつかの間、私の視界は黒く塗りつぶされてしまった。

 


*********


額に冷たいものを感じて、私の意識はゆっくりと浮上する。
重い瞼をなんとかあけると、ぼんやりと明るい色の天井が見えた。

(私の、部屋…?)

見慣れたカーテンの色に、やっと自分がどこにいるか確認して
私はほう、っと長いため息をついた。

「アキ、気付いた?」
「…え?」

聞き覚えのある声がして、顔を声のほうにむけると
ひょい、と茶色の大きな目が私を覗きこんで来た。

「…っ!?」

自分の部屋にいるはずのない人物に、驚きを隠せない。
同時に体中がかあっと熱くなって、汗が噴き出すような感覚を覚えた。

「大丈夫?…じゃないな」

そういいながら、当たり前のように彼は私の頭の上の冷たいもの、
水で濡れたタオルをそっと取り上げ
傍らにあった洗面器にチャプン、と浸した。


「さっき、雷門の執事の人にここまで車で送ってもらったんだよ。
オレもちょっと怪我して保健室に行ったら、アキがふらっと倒れるところでさあ。びっくりしたよ」
「・・・あ、」
「ちょっとは覚えてる?」


いたずらっぽい笑みを浮かべながら、一之瀬くんは濡れタオルをきゅ、と絞った。


「んで、ここまでオレも一緒に送ってもらったんだけど
アキのお母さん、薬がない!ってオレを留守番にして飛び出しちゃったんだよ」
「ええ!?」


母の慌てぶりが目に浮かんで、さらに勝手に彼に留守番を押しつけたことに
驚いて、私は申し訳なくなった。


「ご、ごめんね、一之瀬くん。…迷惑かけちゃって」
「別に迷惑なんかじゃないよ」

にこっとわらって、ぽん、と少し乱暴に置かれたタオルがひんやりと冷たくて。
その気持ちよさと彼の笑顔につられて、私は思わず笑い返してしまった。

「こんな風にアキを看病できるなんて、なかなかないよね」
「う、うん…」
「いつもは逆の立場だから、たまにはオレにも世話焼かせてよ」

幼馴染デショ?と笑う彼に、なぜが私の胸の奥が少しだけ痛む。
あー、でもさ。と彼は鼻の先を掻きながら苦笑して自身のズボンを少しめくりあげた。

「テーピングは…アキじゃないとね」

自分でやってみたんだけどさーと言いながら見せられたその出来栄えに
私が思わず目をしばたかせると、一之瀬くんは、照れたようにまた鼻先を指でかいた。


「ふふふ、うん。ちゃんとやってあげるね」
「サンキュ、アキ」

言いながら彼は私の額のタオルをひっくり返す。

「うわ、熱!」
「・・・え?」

触れた指を、彼がびっくりしたように引いた。
その行動に驚いているうちに、また彼の掌がゆっくりと降ってきた。
小さな重みが額から消えて、代わりに大きな掌がそこを覆う。
その大きさと熱に、私の心臓は大きく跳ね上がった。
彼の何気ない行動によってもたらされる、彼の存在が
やけに彼を異性として意識させて、更に心臓が加速していく気がした。


「…アキ」
「…っ、は、はい?」


低くなった声が至近距離から聞こえる。
何とか返事はしたけれど、実は今、自分の耳に聞こえているのは自身の騒がしい鼓動のリズムだ。


「つらいんだろ?まだ、凄く熱い」
「え」
「何で、いつも我慢ばっかりするんだよ」


彼の声に含まれた怒気を感じて、私はおそるおそる彼の手の指の隙間から
一之瀬くんを見上げた。


「無理しないでオレ達にたよってよ…」

絞り出すような、小さな声。
一之瀬くんのつらそうな表情に、目が離せなくなった。
どうしよう。
私は今までこんな感情で彼を見たことがないのにきづいて
どうしたらいいかわからなくなった。

 

「…いつも、気付くの遅くて、俺って駄目だよね」
「…え?」
「いつも後からその重大さに気付いて、どうしようもなくなる」
「一之瀬くん?」


さらに辛さが増したかのような声に、私は動揺してしまった。
そっと私の額から去って行った、意外と大きな掌は
今は、ゆっくりと私の顔の横に置かれていた。


「ちょっと、ずるいけど」


言いながら、彼の唇が…降ってくる。
何度も何度も。
私の頬や、瞼や、唇の横を。


「…少しでも、オレに移して楽になってよ」
「い、いちの…」
「本当は、全部欲しいけど」


そういって、寂しそうな光を宿した彼の瞳は私をじっと見つめて。
それを隠すように優しく笑うと、最後に頬に少しだけ強く唇が下りてきた。


私は、言葉を発することも出来ないほどに自らの鼓動に翻弄されている。
その頬へのキスを最後に、一之瀬君は私から離れると
ちょうど階下で、玄関が慌ただしく開いてドタバタと駆け上がってくる足音が聞こえてきた。


「あ、おばさん、帰ってきたな」

一之瀬くんは少しだけおかしそうに言うと、じゃあねアキ、早く良くなってよ!と笑って
私の部屋を後にした。

 

優しい掌が、私の中の熱を誘い出してしまった。
あの笑顔に何と答えればいいのだろう?
まるで、あのキスは夢に浮かされた私の思いのような気がして、
一人残された部屋で、私はさらに熱くなった頬をそっと覆った。

 

 

 


***思い内にあらば色外にあらはれる(ことわざ)
恋しているものはいくら隠そうとしても、思わずそれが外(表情)にでてしまうこと。

 


 

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無題
こんにちは!最近から一秋などの小説を読ませてもらっています!やっぱりこの二人っていいですよね^^私もいっちばん好きです★アメリカ組のほうのお話も見ていて楽しいです!もっと読みたいのでこれからもお願いします。まってます☆
ユキ 2010/10/22(Fri)16:58:03 編集
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