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ジャンルごちゃ混ぜSSブログ* テニプリ(リョ桜)* イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ) イナイレでは一秋中心にいろいろ 感想とか好き勝手 今はとにかく一之瀬が好き
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いきり立つ、桃城先輩を見上げたらいきなりすごまれた。

「こんの、ガキ!」
「はぁ?」

眉間にピキピキと音を立てていそうなその表情に、さすがに一歩下がらざるを得ない。
いや
マジで、怖いんですけど。



ってか

「何怒ってるんスか?」


取り合えず、聞いてみた。
すると更に菊丸先輩と不二先輩も背後から現れて
俺を睨み付けるのだ。

「もー!オチビ!酷いじゃん!男の風上にもおけないつーの!!」
「…最低だね、越前?」

にっこり。

ひい!
こっちは冷え冷えとした怖さが、腹の底から襲ってくる。
前を桃城先輩。
後ろを菊丸先輩と、不二先輩。
完全なる包囲網。マジ、絶体絶命。

何が何だか分からないのに、俺、怒られてる…


「だ、だから、俺何したんすか・・・」


その言葉に、桃城先輩が目をむいた。


「何もしなかったから怒ってんだろおおおおが!!」


えと

理不尽です。

だがまだ分からない自分に、痺れを切らした彼らが同時に三人で同時に説明し始めた。



つまりは、こういう事らしい。


昨日、竜崎が俺を待っていたらしい。でも俺は気付かなかった。
気付かないまま、当然俺は帰る。
だが、俺が帰ったと知らなかった竜崎はそのまま校門のところで
あたりが真っ暗になるまで待ち続けていたんだという。
最後に帰った桃城先輩と、不二先輩が暗闇で泣きそうになっている竜崎を発見。
無事、家に送り届けたんだと言う。


「で、でも、それ、俺のせいなんすか!?」
「お前のせいだよ!」


桃城先輩は地団太を踏みそうな勢いで怒っている。
あれ?
あたまの上から湯気がででます?


「昨日、あそこで桜乃ちゃんが待ってたのは、お前にグリップテープを渡すためだったんだよ!てめえで頼んだんだろう!」


そこまで言われてはた、と気付いた。

ミツマルスポーツでたまたま最後の一つだったグリップテープ。
それをまた偶然にテープを買いに来た竜崎に譲った。
「明後日入荷したら、買ってきてよね」
と。

「…あ」

思い出した俺に不二先輩の冷たーい視線が、突き刺さる

「やっぱり、君は最低だね」


マジで怖い。

でも明日、竜崎に何て言おう。
それのほうが、もっと怖いかも…。
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(そもそも、ここに集まったのって…)

人目も憚らず、店内で騒ぐ数人の中学生。
それを尻目にリョーマは、Lサイズのオレンジシュースをずずず、と飲み干す。
そして目の前の女テニの先輩と桃城のヒートアップをどうしたものかと一人おろおろしている
長い三つ編みの少女を見やった。
何故だかお互いのテニス論で白熱している先輩達に挟まれて
桜乃はただ先程からおろおろと手を上げたり下げたりし続けている。


(確か、竜崎のテニスの悩みを、女テニの先輩が聞いていたところに、俺達が参加したんだよな…)

残りのジュースも更に飲み干したところで、リョーマはそんな事を思い出す。

もうすでに喧嘩していると言ってもいい先輩達に、桜乃はもう泣いているかのような顔だ。
きっと自分のせいで、と責任を感じて困りに困っているんだろう。
そんな彼女の気持ちが容易に想像できて、リョーマはストローをくわえながら苦笑した。


「あ、あの、せ、先輩方、あのあの、もう、その・・・ッ」


必死に言い募るが、全く聞き入れられない桜乃はもう涙目だ。
そんな桜乃の表情に気付いたリョーマは、まったく、とまた沸き起こった苦笑をかみ殺し
頬杖をついて桜乃に声をかけた。


「ねえ。ちょっと、手、見せてよ。」
「あの、あ・・・・へ?」

その声に桜乃は茶色の目を、こぼれんばかりに見開いて、リョーマに視線をあわせる。
予想していなかった人物からの呼びかけに、少し戸惑ったのかもしれない。

「え、え、あの…何?リョーマ君…」
「だから」

はあ、とため息を大げさについてみる。


「手を、さ。俺に見せて」
「え?手?」
「そ。アンタ、自分の力が無くて素振りの途中でラケットすっぽ抜けた事を気にしてるんデショ」
「あ、あ…うん…」

今だ喧々諤々の数人がまるでいないかのように話すリョーマに、桜乃は目を白黒させた。
だが、そんな疑問符をたくさん頭の上に並べながらも、桜乃はおずおずと手をリョーマに差し出す。


「そうじゃなくて、手のひらを俺に向けて掲げて」
「え?あ、こう?」


桜乃は言われたとおり、リョーマの目の高さに手のひらを掲げなおした。
リョーマは口の端をあげて笑うと、ふ、とその白い手に自分手のひらを重ね合わせる。


「っ、リョ…!」

途端に真っ赤になる彼女の頬。
予想していた事とは言え、あまりに鮮やかに染まった桜乃の頬に
リョーマは思わず噴出してしまった。


「アンタ、赤くなりすぎ」
「だ、だだだ、だって、リョーマ君が…!」
「手を比べてるだけじゃん。」


逃げそうになる桜乃の手を逃がすまいと、リョーマは指を絡める。
さらに朱に染まる、桜乃の頬。

リョーマはそれを満足した笑みで見つめた。


「ほら、俺とあんまり手の大きさも変わらないジャン。あんたもきっとやれば出来るよ」


言いながら笑うと、桜乃も真っ赤な顔のまま嬉しそうに笑った。



**************
Air.http://airtitle.nobody.jp/

先輩そっちのけ(笑
振り向いた横顔の
あまりの美しさに息を呑んだ。

「ぁ・・・!」

思わず手を伸ばす。
でもその横顔は、突如巻き上がる落ち葉にかき消された。




「…っ!」



見上げる先には、天井と何かを掴もうと延ばした自分の手。
カーテンの隙間から朝の光がこぼれていて、ぼんやりと思考が回転する。


(…またか)


ジャパンツアーに参加するために、日本へ帰ってきた。
その日の夜から、毎晩見続けている夢がある。
届きそうな横顔は、恐ろしい程美しくて。
それなのに伸ばした手の先には何も残らない。
毎日毎日、目覚めて一番に目にするのはただ虚空を掴むまぬけな自分の手なのだ。


(後悔してるのか?)


重い頭を奮い立たせるために、勢いをつけてベットから立ち上がり
バスルームへと向かった。
思い切り良くひねったカラン。
シャワーから飛び出した先の冷たさに、強く身震いした。


(いい加減、ふっきれ)


何度自分に言い聞かせたんだろう。
納得していたつもりだったのに、彼女がいるこの日本に戻ってきただけでこれなのだ。


プロになって一度だけ彼女を遠くから見た。
高校生になった彼女は、相変わらず細いのにすっかり「女」になっていた。
時間は、平等に流れるなんて嘘だ。
彼女の上に流れた時間が、今の彼女を作ったとしたなら
それは俺にとって、どんなに残酷で長い時間だったんだろう。

綺麗になった。
少し伏目がちに笑う横顔は、恐ろしいほど美しく見えた。
声をかければ声は、届いただろう。
でも何故か出来なかった。


(バカみたいだ)

いつまでも引きずっている自分を嗤おうとしたけれど、上手くできなかった。
今だって、それができない。

願わくば。
もう一度、どこかで偶然に会えないだろうか、彼女と。
自分から連絡を取ることもできるかもしれない。

でもそれすらも恐ろしい。


(竜崎が、だれかのものになってたら)


そんな事ばかりぐるぐる巡る。
だからあの夢を見続けるんだ。


[おーい、えっちぜーん!何か食いにいかねー?」


練習終了後の汗臭い部室で、さっさと着替えてしまった桃城は、
座り込んでバッグをまさぐっているリョーマに声をかけた。
そういいながらも、彼の腹の虫はすでに騒ぎ始めている。
リョーマは帽子を脱いでロッカーに放り込むと、
はあ、と大きなため息をついてシャツを脱いでバッグに無造作に突っんでいた。

かなりの不機嫌のようだ。
それに気付いている三人トリオは、少し離れた位置からハラハラとした面持ちで二人の様子を見守っている。

しかし、後輩の不機嫌オーラに気付いているのかいないのか。
桃城は一向にお構いなし、と言った風情で更にリョーマに体を近づけて声を張り上げている。

「おーい!お前、返事くらいしろよ!行くのか行かないのか、ソレくらい言えっての!」

少し痺れを切らしたらしい、短気な桃城が眉を吊り上げたと同時に。
更にリョーマが大きなため息をついた。


「…行くっす」


そんな様子を、不二が遠巻きに見ながらクスクスを笑いをこらえている。
その様子に敏感に反応したリョーマは、更に不機嫌そうにむっと口を尖らせた。



三人並んで、うち二人はおかしなテンションで跳ねるようにじゃれるようにして校門へ向かう。
日も傾いて、半分夜みたいな空。
それを見上げながら、リョーマは不二に言われた一言を思い出していた。

(嘘つきだね、越前は)


リョーマの脳裏に何度も、先程の場面が繰り返される。
それがさらに神経を刺激してイライラは募っていく。

あの時、桜乃が沢山のプリントを持ってよたよたと歩いているのが、校舎の外から見えた。
階段を下りる桜乃の姿が、ガラス越しに何度か見え隠れしていたのだ。
ちょうど休憩時間に入るところだった彼は、少し小さなため息をつきながらも
ラケットを置くことすら忘れて、彼女の元へと向かっていたのだ。

彼女を見つけた時には案の定、彼女はリョーマの危惧したとおりの事をしでかしていた。

(あーあ、全く)

苦笑しながら、リョーマが一歩踏み出そうとしたとき。
聞こえてきた不二の声に、足が止まってしまったのだ。





「あれ!?オチビ、今日、約束あったん?」
「何だよ、ならそう言えよ。」

「は?」


ぼんやりと考え込んでいたところに、ふいにかかった声。
おかげでまぬけな声が出てしまった。
ふと顔を上げると、目の前の二人がいきなり立ち止まってこちらを振り返る。

にやり、とした顔に
リョーマはもう一度、何だ、と声をかけようとした。




「リョ、リョーマ、・・・君」


校門の影から小さな彼女が現れたのだ。
どきん、と体の何処かが跳ねた気がして目を見開いたリョーマはそのまま立ち止まってしまっていた。


リライト  http://lonelylion.nobody.jp/ 素直になれない君へ5のお題
派手に転んでしまった。
足がもつれて、顔からスライディングした。
一瞬あたりは静寂に包まれて、すぐに大きなどよめきが起こる。

はっとして、顔を上げる。
その視線の先、真っ白な視界の中、転々と転がっていく黄色いボール。

あ、と思った。
と、同時に私の周りの音が消える。

「ゲームセット!6-2 ウォンバイ…!」

審判が高らかに告げた選手の名前に、私の体温が下がった気がした。

*********

「桜乃お~!」
「すごいよー、頑張ったよ、本当に…っ」


口々にそう言いながら私に抱きついてくるチームメイトたち。
誰も、私が負けたからって非難をすることは無い。
三年間、一緒に頑張ってきたよね。

泣きじゃくるみんなの輪の中で、私はもみくちゃにされながら
えへ、負けちゃったと口にしてみた。
心の奥底に、何かがじわりと広がる。

なんだろ、この感覚。

今年で最後のテニス部の三年生達は、閉会式が終わってもいつまでもそこを去りがたく
輪になって肩をだいて泣いていた。







「また明日ね」

いつもどおりの言葉で私達はテニス会場の入り口を左右に分かれた。
私の隣で、朋ちゃんが皆に大きく手を振っている。
二年生から途中入部した朋ちゃんは、運動神経のよさも手伝ってレギュラーになっていた。
でも、今日でそれも終わり。
明日から、私達の「テニス部」での活動は無くなる。
そう思ったら、ぼんやりと見ていた足元のアスファルトと、目の前の視界がすこし霞んだように思えた。
つん、と鼻の奥が痛くなる。



「桜乃?」

優しい、優しい、朋ちゃんの声。
でも、私は振り向けない。

「と、もちゃん。私、…コートに、忘れ物しちゃった.・・・だから、先に…」
「桜乃…」

振り向きもしないで、私は朋ちゃんにそう言った。
少しためらったように私の名前を、朋ちゃんは呼んだけど。
うん、また明日ね。夜、電話する。
そう言って私を一人にしてくれた。

私は会場の入り口を、全力で駆け戻った。
少しだけうっそうと茂った木々が、暑い夏の光を遮ってくれている。
思い切り走って、先程のコートへと足を向けた。


誰もいないコートは、蝉の声を響かせて眩しく光って見える。

フェンスを越えて、あのコートは、中学の最後のテニスは、もう私の届かない物になった。

私が、負けたから。

そう思ったから、みんなの前で泣くことはできなかった。
とてもとても泣きたかった、でも

出来なかった。

すりむいた鼻も、傷だらけの頬も、まだ血が滲んでいる膝もちくちくと痛んだけど
それ以上に負けた事の悔しさと、自分が負けた事でみんなともうテニスをする機会を
奪ってしまったこと
そんなものがごちゃ混ぜになって、私は涙が止まらなくなった。


気がついたら私はフェンスにしがみ付いて、夢中で泣いていた。


************


「派手にやったじゃん」

いつの間に、こんなところに彼はいたんだろう?
私はどれくらいここで泣いていたんだろう?

そんな事がふと頭の隅を掠めたけれど
すぐ後ろから声がして、私は、はっと息を呑んだ。。
同時に息を呑んで、でも止まらない嗚咽に、ぐっと息が詰まったようになる。
あわてて手にしていたタオルで顔を覆う。

今、こんな顔、見られたくなかったから。

リョーマ君にだけは…。

「体力、もっとつけないとダメだね。…最後のあれ、足がもつれたんだろ」
「でも、…アンタにしてはよく頑張ったんじゃないの」

その言葉に、リョーマ君は私の試合を見ていたんだと気付いた。
同時に、あの場面を、思い切り転んでしまったところを見られたかと思うと
逃げ出したいほどの恥ずかしさに、また涙が滲んできた。

肩が震える。



「竜崎」


いつもより、優しく心に響く声。
フェンスに向かったままの私の耳元にさらに、声がかかった。


「こっち向いたら?」

「…っだって…」


気を抜くと嗚咽に支配されそうになるのを、なんとか深呼吸で押し止めようとする。
でも、出来なかった。

強い力に、一瞬足元をすくわれたかのような感覚をおぼえて
驚きで、思わず声が出てしまった。
気付くと、私はリョーマ君にくるりと向きを変えさせられていたのだ。




「すっげえ顔。」

言いながら、至近距離にある彼の顔が綺麗に笑う。
私は驚きと、激しく波打つ心臓に翻弄されながら、熱くなってしまった頬が
赤くなるのが分かって、どぎまぎと視線を泳がせる。


「女のくせに、顔中傷だらけジャン」

そういいながら、すりむいた鼻に、ちょん、とリョーマ君の指先が当たった。

頑張ったね、あんたにしては。

またそう言ったリョーマ君の声に、私はこらえていたものが目からぽろぽろと零れ落ちるのを自覚した。


「…っ、う、う、」


声にならない。
きっと酷い顔で泣いている私の目の前のリョーマ君は、やっぱり綺麗に笑っている。
こんな時だけ、ずるいよ。優しい事、言うなんて。

心の中でリョーマ君に強がってみても、声にならずにやっぱり私は泣いてばかりで。


そうしているうちに。
リョーマ君は私の傷だらけの鼻の先に、キスをした。







「全国大会なら、俺の試合見にこれば?その代わり、優勝したら、今度はこっちでしてもらうから」


ニヤリと笑うと、リョーマ君はぽかんと開いていた私の唇に指をそっと押し当てる。


「リョ、リョーマ君!?」

体中が熱くなって、恥ずかしさに一気に涙なんて止まってしまった。
怒っていいのか、泣いていいのか分からないくらい、私はパニック。

リョーマ君はおかしそうに笑いながら、私に手を差し出してくれた。


「ねえ、竜崎。テニス、好き?」


唐突な質問。
手を繋ぎながら、私はまだ涙の乾かない傷だらけの顔で、精一杯笑った。

「リョーマさまあ~!」



暑くて暑くて。
朝から体がどんよりと重い。
そんな朝なのに、耳に飛び込んでくる声はやけに元気で、それが一層リョーマの機嫌を悪くした。

「おっはよーございます!」

そう言いながら、自分の前に回りこんでまるで敬礼するように額に手を当てる、ゲンキな彼女。
リョーマは前に回りこんできた彼女に、仕方なく足を止める。
強制的に止められたといっても過言ではない状況ではあったが、はあ、とため息をつくことで何とか気持ちを持ち上げた。

「リョ、リョーマ君、おはよう…」

ゲンキ一杯の朋香の後ろから、桜乃がおずおずと声をかけてきた。
余りにもゲンキな朋香に、リョーマは予想していなかった桜乃の出現に、少し驚いて俯きかけていた顔を上げた。

「はよ」

するり、と自然に言葉も滑り落ちる。
先程、自分は機嫌が悪くなったはずではなかったか。
そんな事を思うことも出来ないほどに、リョーマは驚きの表情のまま桜乃をじっと見入っていた。
自分が言葉を返した事が、自分でかなり意外だった。

桜乃はじっと見られたことが恥ずかしいのか、少しおろおろして視線をさ迷わせる。
下を向いたり、もじもじしたり。だがリョーマは表情を変えることも無く、じっと見続けている。
そんな二人の様子に、朋香は目をパチパチと鳴らすと、とたんにニヤリと表情を緩ませてリョーマに顔を近づけてきた。


「もうもう~!リョーマ様ってばー!桜乃が可愛いからって、そんなに見ちゃ、穴が開きますよ?」
「・・・は?」


一瞬、言われた事を理解できなかったリョーマは朋香の顔を凝視したあと
すぐにふい、と視線を逸らした。


「何言ってんの?今日も竜崎がぼんやりしているなって見てただけだから」
「あら?」


リョーマのいつにない言い訳に、朋香はさらにニヤリとした笑みを深め、
その後ろでは桜乃が「ええ!?」とリョーマの言葉にショックを受けていた。


「リョーマ様ってば。見てたことは否定しないんですね」


うふふ~!と口元に手を当てながら言うと。
リョーマはそのままきびすを返してさっさと歩き出してしまった。

「あ!リョーマ君!?」

少し慌てた桜乃が声をかける。
だがリョーマはそれにも答えずに、どんどんとクラブハウスへ向かっていく。

「もう~、あとちょっとだったのになあ~!」

ちぇ!と心底悔しそうに朋香が舌打ちした。


「全く!リョーマ様って本当に素直じゃないんだからー!」

そういいながら、朋香は心配そうにリョーマの去った後を見つめる桜乃を促し
校舎へと駆け込んでいった。


リライト  http://lonelylion.nobody.jp/ 素直になれない君へ5のお題
初めてあの二人を見たのは、中学の入学式だった。


一人は、長い、長い三つ編みがとても印象的な女の子。
そしてもう一人は思い切りあくびしながら、入学式の会場に遅刻して入ってきたやたら綺麗な顔のアイツ。


どちらも心の中に残ってしまった。
中学、高校の三年間、長い三つ編みの女の子、竜崎さんと同じクラスになる事は無かったけれど
彼女がどんどん綺麗になっていくのは、知っていた。
だって
ずっと、見ていたから。

ずっと見ていたから、知っているんだ。

竜崎さんが恋している事。
名前のように、綺麗に頬を桜色に染めて、とても綺麗に笑うようになったから。
恋をしている事を、俺にもわかってしまった。そう、彼女はあいつに恋、してるんだってことが。

あいつ、越前リョーマ。
男の俺から見ても、かっこいいと思う。口だけでなくて本当にテニスでは無敵で。
何も不自由してなさそうな、それでいてしれっとして、無表情で、やたらテニスが強くて、勉強もできる…ずるい奴。
何もかも手にしているのに。
そのうえ、あの子まで連れて行ってしまうなんて。

でもあいつは、竜崎さんにだけは、あんな顔をして笑う事を 俺は知っていた。




俺の竜崎さんへの気持ちは、きっと彼らが持っている気持ちと同じ呼び名だったものだろうと思う。
彼女のちょっとドジなところとか、無邪気な笑顔とか。
それを見るだけで俺は何かに満たされるみたいに、熱くなってしまったから。

でも俺の想いは、誰にも知られないうちに終わる事になった。

だから、俺の気持ちを「恋」と名づけるのはもう出来なくなった。




風の噂で、竜崎さんと越前が結婚するらしいと聞いた。
「噂だろ?」とその話をした奴は言っていたけど
俺はきっとそれは本当なんだろう、と思う。

だって

俺はそれを見ていたんだから

二人の間にいつのまにか芽生えたそれが、ゆっくりと育っていく様を。




その二人の恋を知っていたんだ。…すっと見守ってきたんだから。

優しい彼女の笑顔に、「恋」しながら。




浴びる野 http://psyco.jp/kiss/abiruno.html
月影には、寂しさが付きまとう。
水の底にうつるもうひとつの影はこんなにも近いけれど、決して触れる事ができないのだから。

***********

隣で、今日も帰り道を辿る。
いつしか 月も中天に昇っていた。
でもまだ沈みかねている夕日が、長い影をせわしない喧騒を遠くに聞く住宅街におとしている。
確かギリシャ神話では月は、女性を守る女神だという。
でも、日本の月の神様は男性だったなあ、などど桜乃は空に浮かぶ薄い月を見ながらぼんやり思った。


「何みてんの?」


リョーマは桜乃にちらりと目だけで視線を投げて、ぶっきらぼうに言葉を発する。
ぽかんと月を見上げていた桜乃は、はっとしてすぐに頬を赤く染めた。


「あ、その・・・月が、綺麗だと、思って。」


恥ずかしさからか、桜乃の言葉はだんだん小さくなっていく。
それでも、肩が触れるか触れないかの、この距離でリョーマの耳に届かないはずは無い。
桜乃の言葉に、リョーマは、ああ、といいながら空を見上げた。


「…俺は、月はやだ」
「え?」


月を見上げながら、リョーマがポツリと呟きそのまま立ち止まる。
一瞬反応の遅れた桜乃は、二、三歩進んだところで足をやっと止めた。
思いもかけない言葉が桜乃の耳をうち、その真意をはかりかね、少しだけ首をひねった。


振り返ると、彼はまだ空を仰いでいる。
月の青い光に照らされている彼の顔に、桜乃の目はそのまま釘付けになった。
リョーマの端正な横顔。だんだんと青さを増す月の光の中で
彼の姿は月光にまるで浮かぶように見え…桜乃は少し怖くなった。

(どこか遠くに、…行っちゃうみたい)


ぼんやりとしていると、ふとリョーマの視線が自分を捕らえている事に桜乃は気付いた。
じっとそらされることの無い視線。
強い光が宿った瞳に射抜かれるようにして、激しくなる心臓の音とは裏腹に体は動く事ができなくなった。


「俺は、やだ。…月に、…アンタを取られちゃいそうでさ」
「え?…月に?」


そういうと、リョーマはもう一度月を見上げた。
赤土のコート上の試合から、現実へとかえる。

全力を使い果たし、ロッカールームへとなだれ込むように彼は戻ってきた。
滝のような汗に、すでにウェアは逞しくなった肩の線を隠すことが出来ない。
コーチが手を叩いて彼を迎えると、彼らは無言で手を合わせて喜びを表現した。

「竜崎」

振り向くなり、リョーマは部屋の片隅でタオルを握り締めて立ち尽くす桜乃に声をかけた。
その目は潤んで、頬は高揚した気持ちのためか赤く染まっている。

「竜崎?」


リョーマは、もう一度声をかけた。
桜乃は目をしばたたかせて、ぽろりと涙をこぼすと
おずおずとタオルを差し出してきた。

「おっ…おつ、…かれさま…っリョーマ…君」

すでに嗚咽交じりの声は、疲れ果てていたリョーマの心にあのときのような新鮮な風を
流し込んできた。
思わず手を伸ばし。
か細いのに、女性らしい優しい体を引き寄せた。


「サンキュ。…後でゆっくり癒してよね」






浴びる野 http://psyco.jp/kiss/abiruno.html
見られたくない。
声だって聞かれたくない。

こんなにも、自分が独占欲が強いだなんて知らなかった。



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