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ジャンルごちゃ混ぜSSブログ* テニプリ(リョ桜)* イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ) イナイレでは一秋中心にいろいろ 感想とか好き勝手 今はとにかく一之瀬が好き
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*********


夏が去っていく
ああ、待って。
まだ僕らはここにいたいんだ

友達のまま、…いられやしないのは分かっているけど。


















ティーンエイジ・レイン














ああ、夏も終わりだな。

そう感じさせるのは、皮肉なことに逃げ込んだ昇降口から見える稲光だ。
土を打つ夕立が、空の明るさを消して一気に夜のような暗さを連れてくる。
はあ、とため息をついたオレはこのどしゃぶりの中、こちらに向かって走りこんでくる
人影に気づいた。

「ど、土門、あれって」
「あ?…あ!」

「「アキ!」」

教えたのはオレで、気付いたのは二人同時だった。
人影、秋は、オレ達の声に気づくとさらに必死に走りこんで来る。
その姿に、オレ達は祈るような気持ちになった。

瞬間、当たりが真っ白に光る。
同時にとどろく雷鳴。
何もかもが凍りついたような感覚に、思わず目を閉じた。


「きゃあ!」

雷鳴とともに、かすかに聞こえた叫び声。

秋の叫び声を聞いて、オレは昇降口の屋根の下から飛び出した。
雷鳴に驚いて体をすくませた秋は、もうしゃがみ込みそうな姿勢になっている。
秋は、子どものころから雷がきらいだったんだっけ。
そんなことを何故か思い出しながら、ここからなら部室のほうが近いことを思い出す。
秋の場所にたどり着いたオレは、土門に向かって、雨に負けないような大声を張り上げた。


「土門!部室に行こう!」
「えっ!ちょ、ま!」

土門の答えを聞かずに、オレは秋を半分抱えるようにしてサッカー部の部室を目指した。


***********


部室の鍵は、いつも秋が持っている。
毎日の朝練でいつも一番にやってくるのが、秋だからだ。
手の中にある秋の体は、小さく震えていた。
いつも気丈な秋らしからぬことに、オレは少なからず動揺した。

土門が追いつき、オレは秋のカバンから取りだした鍵で部室に入り込んだ。
部室は古いが、中は綺麗に片付いている。
手探りでスイッチを探して、パチリと灯すと
電球がジジ…と音をたてた。


秋をパイプ椅子に腰かけさせると、オレは自分のロッカーからタオルを取り出して
秋の頭にそっとかぶせる。

その時、雨にぬれた秋の制服が彼女の肌に張り付いているのが見えた。
白い制服の下に、薄く透けて…肌が見える。

思わず顔をそむける。
一気に顔が赤くなる。
ふと、向かい側に立つ土門を見ると、彼も視線を空にさまよわせていた。

(土門も見たんだな)

なんだか悔しいような気持ちもわいてくる。
それは土門も同じなのか、オレを複雑な顔で見ていた。

「…っアキ!あ、あのさ。体が冷えるといけないから、シャワー室つかいなよ!」
「えっ、でも」

小さく震える体を両手で抱きしめている秋の唇の色が悪くなってきていた。
両手にはさまれている胸のあたりも透けて…心臓に果てしなく悪い。
目が思わずそこに行ってしまうのを、理性の力で何とか抑えて
オレは土門からの援軍を待った。

「そ、そうだよ秋。ちゃんと体温めないと、風邪引くぜ。」

言いながら土門はシャワー室を指さし
いつの間にか手にしていた大判のタオルを秋に渡した。
オレも負けじと、ロッカーから着替え用のプラクティスシャツとジャージ上下を
つかむと、秋に差し出す。

驚いたような顔の秋だったが、勢いよく立ち上がると
ごめんね、と言いながらシャワー室に駆け込んでいった。



オレと土門だけの部室内に、響くシャワーの音。
外の雨の音もそうとう響くのに、何故か耳はシャワーの音だけをとらえる。
なんだか、変な気分になりそうだ。


「なんかさ」
「何、土門」
「秋、変じゃねえ?」
「…」

土門の目が、秋のカバンを見ていた。
カバンの底が泥で汚れている。
さっき、雷に驚いていたときにはカバンを落としたりしていなかったから
この泥はなんだろうと、疑問が浮かんだ。


「秋らしくない」
「…うん、なんか…震えてた」
「え?」
「さっき、…なんか震えてて。雷に驚いたからか…な」
「嫌いだけど、」
「…なんか」


そこで、まだシャワーの音が途切れない部屋の中で、土門はさらに
声をひそめて言葉を発した。

「俺には、秋が泣いてるように見えた」
「えっ」
「…うん、あの顔は…泣き顔だ」


思いだしているのか、土門は腕組みをして
目を伏せる。
オレは、その言葉にある人物を思い浮かべた。


「円堂…?」


思わず口にしたとはいえ、円堂が秋を泣かせるなどとは考えにくい。
それでもあの秋が泣くとすれば…円堂しか思い浮かばなかった。
その事実にオレの胸がぎゅうとしまって、思わず制服をつかんだ。


「だろうな」

土門は相変わらず腕組をしたまま、うなるように言う。
ああ、土門もオレと同じ気持ちなんだろうとその表情を見て感じた。


―――アキ、オレなら君を泣かせない。
そう頭の中で誓うように繰り返して、オレは秋のカバンを見る。
あいつに敵わなくても。
それでも、秋を泣かせるのなら、オレは。


思わず力が入る握りこぶしに、どうしようもないいらだちが募る。




「あ、あの。」


奥から、小さい声が聞こえて。
オレと土門ははっとして弾かれたように振り返った。
オレのシャツとジャージをはおった秋が、タオルを胸に抱えてそこに立っている。


「ありがとう、タオルと服。洗って返すから」
「あ、いや。いいんだけど、大丈夫か?」
「え?」

土門は、聞いてしまってから僅かに顔をこわばらせた。
しまった、という空気にオレは取りつくろうように声を張り上げた。


「いやあ、さっきさアキの唇が真っ青でさあ、風邪引いたんじゃないかって話してたんだ!」
「そんなに、青かった?」
「うん、真っ青!あんなに青いアキは見たことないよ」
「なに、それ」

オレの言葉に秋はふふふ、と口元を押さえて笑う。
その笑顔にオレも土門もほっとする。


「そうだなあ、秋はいつも叫んで怒って赤いイメージだもんな」
「え!何、土門くんひどい!」
「あはは、でも怒っててもアキは可愛いよ!」

オレはそう言って秋を見た。

その途端、痛いくらいに鼓動が暴れだして息をつめた。
そうだ、今、秋が身につけているのは
オレのシャツとジャージ。

そんな事に思わず赤くなり、オレはあわてて目をそらした。



いつの間にか、外の雨音は静かになっていた。
無言になった空間を誤魔化すように、オレは部室のドアを開けて外をうかがった。


「あ、雨、止んでる!」


空には切れ切れに飛ぶ雲の隙間から、星が見え隠れしている。


「星が見えるよ、土門」
「お、どれどれ。おー、本当だ。」
「嵐が過ぎた後の空って好きだなあ」

オレ達は、部室の前に三人並んで星空を見上げた。


三人並んで歩く帰り道。
そっと盗み見た秋の瞳は、確かに赤くうるんでいた。

それを認めて、オレの胸の奥から痛みがわきあがる。
ああ、どうしてこんなにオレは無力かな。
秋はいつも、オレや土門に笑顔一つで安心をくれるのに。

オレは、オレ達はその涙のわけを無邪気に問いかける事も出来ない。


どんなに秋を想っても。
この想いが秋を、今悲しませてしまうことも、わかってしまうくらい
オレ達はちょっとづつ大人になっていく。



雷門の空の雲は流れていく。
雲を吹き飛ばす風は、少しだけ冷たくて
黙って歩くオレ三人は、少しだけ肩を寄せあった。


秋の肩に下げられたカバンの底についた、僅かな泥の跡が
とてもオレ達には悲しく見えた。



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