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ジャンルごちゃ混ぜSSブログ* テニプリ(リョ桜)* イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ) イナイレでは一秋中心にいろいろ 感想とか好き勝手 今はとにかく一之瀬が好き
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ぽこぽこと
どこからか生まれてくる泡に見とれているふりをして
ガラスに映る君に見とれているなんて言ったら
…君はどうするんだろう?



********







「おはよう!一之瀬くん!」

明るい声に胸がはずむ。
勢いよく振り向くと、夏空にも負けない彼女の笑顔。
シフォンのひらひらしたノースリーブのチュニックの下から
レギンスに包まれた、細いけれど健康的な脚が覗く。
振り向いた一之瀬は、秋の姿に一瞬息を詰まらせて
目を見開いた。

(あれ?)

どくん、どくん、と急に耳の奥で響きだした音に一之瀬は首をひねる。
暑い真夏の空の下で珍しく先に来て、
待っていたのがいけなかったのだろうか?
秋はいつも通りの笑顔でニコニコと一之瀬に歩み寄ってきた。


「おはよ、アキ。その荷物、なに?」


一之瀬はごまかすように、早口で秋の肩口に
重そうにぶら下がる荷物を指さす。
記憶違いでなければ今日は水族館に三人で行く予定のはずなのだ。


「あ、これ?お弁当だよ。張り切って作りすぎちゃった!」
「え、本当!?」
「うん」


にこやかに頷いてから、秋ははっと顔色を変える。
あ、迷惑だったかな、と急に眉を下げて言う彼女に、
一之瀬はあわてて大きくかぶりを振った。


「そんなことない!オレ、秋の料理大好き…大好きだから!」
「えっ?」
「…え?」



突然ぼん!と音がしそうな勢いで、頬を真っ赤に染めた秋に
一之瀬は驚いて、ぴたりと動きを止めた。
お互いに動き出せずに、静止したまま顔を見合わせる。

秋の目がうるんでいる。
頬が真っ赤に染まって、白い肌にやけに映えて。

一之瀬は先ほどよりもはっきりと、鼓動の音が大きく
耳の中で響き始めたのを自覚する。
二人は何も言えずに、ただお互いに見つめ合った。



「おーい!遅くなってわりい!」



バタバタと掛けてきた土門の足音に、
二人は弾かれたようにその場に飛び上がる。


「…?何やってんだ、ふたりとも」

土門の声に、一之瀬はビクリと大げさなほどに体を震わせると
なんでもない!それより遅いじゃん、土門!と彼に向き直り
何も言わずに土門の背中を押しながら歩き始めた。
秋も、二人の後ろを赤い頬を隠すようにうつむいて
足早に先を行く二人を追った。




*******





水族館は、夏の暑さから逃げるように集まった人々で込み合っていた。
大きなこの施設でも、その通路に人があふれかえっている。
大きな荷物を抱えた秋は、人にぶつからないように歩くのに苦心していた。
「あ」
とん、と小さな衝撃に足元がくらりとする。
瞬間、秋は張り切り過ぎて大きな荷物を持って来てしまった
自分の愚かさを悔いた。

来たる衝撃に、思わず目を閉じると
「セーフ」
という言葉と共にふう、と息をつきながら左右から伸びた手に
秋の体は支えられていた。
秋が何事かと思う間もなく

「秋、荷物」
「アキ、こっち」

両側に、秋をまるで人波から守るように土門と一之瀬が歩いていた。
二人の言葉が聞こえたのと同時に
秋の肩の重みはふわりと消え、左手は柔らかい熱さに包まれる。

見上げると土門は秋の大きな荷物を当たり前のように持ち
少しだけ前を行く一之瀬の手はやはり当然のように秋の手を握っている。
その光景に、秋は少しだけ目を見開くと
柔らかく頬をそめて、二人にしか聞こえない声でありがとう、
とつぶやいた。




順路をめぐりながら、三人はゆっくりと歩いていた。
海の色に光が反射する通路に、秋は見とれる。
そんな彼女を見やって、土門と一之瀬のふたりは顔を見合わせて笑う。
ふと、上を見上げた土門が何事かに気づいて、一之瀬を肘でつついた。


「お、ちょうどいい時間みたいだ」
「本当だ!ナイスタイミングってやつ?」


掲示板に目をやっていた二人が声をそろえて、ニヤリと笑い合う。
うっとりと水槽に目を奪われていた秋は、
一之瀬に手を引かれるままに
通路から外れて階段を昇り始めたことに目をまたたかせ、
あわててあたりを見回した。

「え、ちょ、ちょっとどこに行くの?順路、こっち…」
「いいから、いーから!」

逆光の中でも嬉しそうに笑う、一之瀬と土門の笑顔に秋は心を揺らす。
笑顔に、思わずつられて秋も笑うと突然前が開け、大きなプールが目の前に広がった。


「イルカショーのプール!」


秋は目を見開いて、あたりを見まわす。
まだ客席は閑散として人もまばらだ。
時計を見ると、次のショーまで30分ほど時間があった。


「え、もう…入ってもいいの?」
「いいんだよ、あ、あそこいい所あいてんじゃん!」


土門は長い腕を目一杯伸ばして、一点をさす。
一之瀬もうん、あそこでいいんじゃない?と
秋を優しくリードして歩きはじめる。


「ここなら、秋の弁当も今のうちに食えるし」
「イルカショーの特等席だし!」


ささっと、ベンチを自分のタオルで払うと
土門が恭しい動作で、秋をベンチにいざなう。
同時に彼の腹の虫も盛大にさわいで、土門はへへへと子どものような笑顔になった。


「あははは!台無し、土門」
「うっせー!お前こそ、秋の手をいつまでも握ってんじゃねえよ」


早く座れよー、もう弁当の匂いがずっとしててたまんねーんだよーと
先ほどの態度とは一変して、土門はベンチにどさりと腰かけた。

土門の言葉と同時に、一之瀬がはっとした表情で
小さく秋に「ごめん」とつぶやきながら手を離す。
秋も胸をどきりと揺らしながら、ううん、と小さく答えて下を向いた。



********




秋の弁当を前に、二人はうまい、うまいを連発する。
土門も一之瀬も競うように食べ、周りの人々の耳目を自然に集め
通りすがりの人も何事かと覗きこんでいく。
秋は少し恥ずかしさも感じたが、何故か二人が誇らしくて
頬を染めながらも、ニコニコと食べまくる二人を見つめていた。



イルカショーは、秋が以前から見たがっていたものだった。
イルカは思う以上に可愛くて、ショーは想像以上に楽しい。

一之瀬と、土門が自分を見つめてるなどとは思わず
秋は子どものように目を輝かせて、空中で見事な回転を決めたイルカに歓声を上げる。
すごい!かわいい、すごい!の連発で、
秋がいかに興奮しているのか二人には十分すぎるほどに伝わってきた。
ショーの終わりには、秋の目に涙がうっすらと浮かんでいるほどに
秋は夢中でショーを見入っていた。





(イルカより、秋のほうがかわいいっつーの)


イルカがかわいい!かわいいと興奮してはしゃぐ姿に、二人は苦笑する。
共に同じことを思っているなどとは思いもせずに
イルカが休んでいる控えプールへ急いで向かってしまった彼女の姿に
彼らは顔を見合わせて、苦笑した。







楽しい一日は、あっという間に過ぎ去っていく。
広い館内には西日が差しこんで、人の姿も随分と減っている様に思える。
水族館の窓から見える海にも、夕焼けの赤色が反射し始めている。

三人は、だれも「帰ろう」とは何故か言いだせず
人が少なくなった館内をゆっくりと並んで歩いていた。

色とりどりの、熱帯魚のコーナーは大きな水のトンネルになっていた。
三人は無言で、水に揺れる天井を見上げ思い思いに泳ぐ魚を見ていた。
外の光が差し込んで、青とオレンジの境界の色が
秋の頬や、一之瀬の瞳、土門の肩を染めて揺れている。


ふいに人の流れが途絶えた。
聞こえるのは遠くに響く人の声だけ。


誰もいない、光が揺れるトンネル。


水槽の中に揺れる泡が次々に生まれては消えてゆく。
向かい合うように背中を向けて、秋と一之瀬と土門は無言で、トンネルに視線を泳がせる。


深い水の色の奥に、秋の細い肩が映る。
少しはねた髪、華奢な背中。
並んで立っている土門と一之瀬は黙って、ガラスにうっすら映る秋の影を見つめた。

秋は、空から差し込む夕日の色を見ている。
光をつかもうとするように、そっと手のひらを広げて、視線を落とす。
もどかしさが、三人を包んでいる。


届きそうで、届かない。
つかめそうで、つかめない。


三人は、館内の閉館の放送がかかるまで、トンネルの中でただ黙って佇んでいた。











「今日は楽しかったね!」

深い紫を抱える光に変わった夕焼けを背に受けながら、秋は二人を振り返る。

「ああ」
「そうだな、水族館なんてオレ、久しぶりだったよ」


ゆっくりと歩く三人を、海風がゆっくりとなぜてゆく。

ふわりと笑った秋に、土門と一之瀬はひそかに胸を揺らした。
こんなにも動揺するのは、いつもと違う海の風のせいだと想いながらそっと目を伏せる。

ふいに、しゃらん、とちいさな魚が目の前に泳いだ。
土門と一之瀬は驚いて目を丸くする。


「な、なに!?」


一之瀬が秋を見て、再度驚きの声を上げる。
ピンクと青のイルカがついたキーホルダーが三つ秋の指から揺れていた。
いたずらっぽい笑顔の秋が、イルカの向こうから覗いて
一之瀬は、またドキリと動揺して、前のめりになった体を後ろに引き戻した。


「これ、さっきの水族館で売っていたの。…こんなのだけど、二人にお礼」
「お礼って」
「誘ったの、俺らだろ?」
「…そうだけど、本当に楽しかったから」



えへへ、と照れ笑いする秋が続けて
「お弁当も、全部食べてくれて嬉しかったんだよ」と首をかしげてさらに頬を染めた。

秋は言いながら、キーホルダーを二人に手渡す。


「サンキュ」
「ありがとな、秋」

もらったキーホルダーを、二人はニッと笑って受け取る。
もう一つのキーホルダーを手にしながら、秋もまた、どういたしましてと笑った。




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