ジャンルごちゃ混ぜSSブログ*
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イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ)
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感想とか好き勝手
今はとにかく一之瀬が好き
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ゲームのネタばれを聞いて衝動的に書いたものです。
ゲームともアニメとも違いますがよろしければどうぞv
秋ちゃんに会う前の葛藤する一之瀬くんです。
ゲームともアニメとも違いますがよろしければどうぞv
秋ちゃんに会う前の葛藤する一之瀬くんです。
*********
3年前オレは一度死んだ。
何もかも失って、もう何もかもから隠れたくて
土門と秋を傷つけると知りながらも、…父に無理を言った。
(じゃ、約束しようよ!一生一緒にサッカーするって!)
無邪気に手を重ねる、自分たちの幻がまぶたの裏から消えずに
俺は病室でむちゃくちゃにあばれた。
「出来ない!サッカーなんて!できないんだ!」
苦しみが繰り返し襲う日々の中で、
俺はいつも秋の笑顔を思い出していた。
(男の子はいいなあ。私もずっとサッカー、したいのに)
(でも一之瀬君や土門君たちが頑張るなら、私もずっとサッカーに)
小さくて柔らかい小指。
自分の少し硬くなったそれに絡まる。
自分の包帯だらけの手をみつめて
知らぬ間に、涙が頬を伝っていた。
ああ、そうだオレのサッカーは、オレだけのものじゃない。
オレたちの、ものだったんだ。
(秋)
もう一度オレは。
**************
過酷だった日本での戦いを終えて
オレたちは日本を去り、土門とアメリカ代表に選ばれた。
4年前を思い出すと今、サッカーに専念できる事が
まるで夢のようだった。
3年ぶりに会えた秋は、思い出の中の彼女よりすっかり大人びて
昔の少しおてんばだったところは影をひそめていた。
それでもその言葉の端々に、あの時の彼女を見出して
オレはこっそりと笑いをこらえていた。
必死にオレたちに食いついてきた、
あのおてんばな明るい秋は根本では変わっていないと
気付いていたからだ。
それでも、変わってしまった事はある。
彼女の中に、サッカー以外に心引かれる存在が現れたということだった。
それに気づいたときオレの中にどうしようもない切なさがこみあげてきた。
ああ、変わってしまったと。
それを認め、受け入れねばならない時の流れを、少しだけ恨んで。
それでも毎日彼女がそばにいる事、それだけでオレは満たされていたんだ。
だから
アメリカに発つときには、秋には何も言わなかった。
正確には、メールでひとこと告げるだけ。
今にして思えばそれはきっと、自分の決心が
揺らぐのを無意識に恐れていたせいだろう。
それでも、その時のオレはまだ気付いていなかった。
FFIに出場が決まり日本よりも一足先に
俺たちアメリカチームはこの島に入っていた。
プロリーグのユースチームにも誘われて
オレは心身ともに充実していた。
それにこの大会には、イナズマジャパンもやってくる。
円堂たちとまた会える、戦える喜びが体中にみちていた。
嬉しさに隠れていたが、少し前からオレは体の違和感を感じていた。
疲労がたまっているのだろうと、監督の勧めもあり、
軽い気持ちで島のスポーツドクターのチェックを受けた。
「…カズヤ、精密検査を受けてくれ」
「え?」
「このままでは、君は二度とフィールドに立てなくなる可能性がある」
ただの、検査結果を聞くだけの気楽なものだったはず。
予想もしていない言葉に、その瞬間、音が消えた。
目の前のドクターの声はまったく耳に入ってこなくなった。
かわりに暗闇に一つの光がひらめいた気がした。
同時に、俺の脳裏に彼女の笑顔が咲いてにこびりつく。
「もう一度言う。カズヤ、君の体に残る事故の後遺症が、
君の命を脅かしているんだ」
秋、君なら、なんて言ってオレをはげましてくれる?
***************
「マジかよ・・・」
告げた事実に、土門は言葉を失った。
俺はうなずくこともせずに、じっと土門を見据えた。
そう、それは事実。
4年前の事故の後遺症が、また俺の命と、サッカーを奪おうとしている。
それを回避するための手術はできればすぐにでも行わなければならない。
だが成功率は極めて低く、最悪、命の保証もない。
それが今の俺にある事実だった。
「なに、悠長なこと言ってるんだ!
今すぐにでも手術をしないといけねーんだろ!何を迷う!?」
土門は激昂して叫ぶと、俺の両肩をつかんだ。
「痛いよ、土門」
「一之瀬!」
睨むように俺を見る土門の目の奥の色に、俺は泣きたくなった。
だか今それを表に出すわけにはいかない。
「…監督とも話し合って決めたんだ。俺は円堂との戦いに
…俺の命をかけてもいい」
「一之瀬!お前…!」
「俺は、…それが俺のサッカーがをやる証。
今の俺生きている理由だから」
「…っ」
土門の目に浮かぶ動揺。
俺は手を握り締めて、土門の目を見返した。
「…またお前、俺たちの前から…勝手にいなくなる気かよ」
「土門」
「あの秋の悲しみを、苦しみをお前は知らないから…っ」
「…わがまま言ってるのはわかってる」
「分かってねえよ!お前は、お前のサッカーは…
お前だけのものじゃねえだろ!」
そう叫ぶと、土門は振り切るように走りさっていった。
知らぬ間に、顔は下を向いていた。
目の前の地面が揺れている。
こんなことで動揺しないと決めたはずだ。
俺のサッカーを、俺は俺の大事な人達にささげる覚悟をしたはずだ。
(一之瀬くん!)
まな裏に秋の笑顔が浮かぶ。
とたんに、足の力が抜けて俺はがくりと跪いた。
―――アキ、アキ、アキ、…ああ、こんなにも、
こんなにも君にすぐに逢いたい。そばに、いて欲しい。
想いが
言葉になって、俺の胸を突き刺す。
ああ、やっと、今頃わかった。
―――俺は秋が大好きなんだ。
秋じゃなきゃ、駄目なんだ。
あの時からずっと俺は、秋を求めて走り続けていたんだ。
練習中は絶対にメンバーに気取られてはならないと、
いつも以上に気を張った。
その気持からいつも以上に激しい練習になる。
苦しさを隠し、紛らわせるためにオレは
がむしゃらにフィールドを駆け回った。
そのせいで練習が終わった途端、体がまるで鉛のように重くなる。
無謀なことをしているのは、知っている。
それでも…
通路を歩いてる途中、壁が近寄ってくるような錯覚に
思わず腕を突き出すと
どん、という衝撃で自分が壁に手をついたのだと知れた。
「はあっ!はあっ!…っはあ!」
どくどくと耳の中で響く血流。
それが全身に痛みを広める。
痛みが呼吸を奪って、俺は空気を求めてさらに息を荒げた。
「一之瀬!おま、…!大丈夫かよ!」
駆けてくる、スパイクの硬い音がした。
土門の声から、血相を変えていることが分かった。
大丈夫、そう答えようとした声が荒い呼吸音にかき消される。
「しっかりしろ!」
土門のその声を耳にしたのを最後に、俺は意識を失った。
気付くと、自分の部屋のベッドの上だった。
この一週間ほどで見慣れた天井が、やけにしらじらしい。
「一之瀬、気づいたか。」
土門が手に食事の乗ったトレーを持って部屋に入ってきた。
「…土門。ごめん、迷惑掛けた」
「迷惑なんて言うな、馬鹿だな」
食器の音をさせながら、それをテーブルに置くと
土門が食うか?とそれを指さした。
今はまだ。とかぶりを振るとだろうな~とのんびりした声が帰ってきた。
「マークとディランがいなくてよかったよ。あいつらに知れたら」
「…うん」
両手を頭の後ろに組んで、まるで普通の事のように言う土門に
オレの中に申し訳なさが募る。
いつもこいつばっかりに、負担をかけている。
上半身を起し白いシーツをつかんで、オレはもう一度
ごめんと土門に頭を下げた。
「…お前は何を言っても聞きゃあしねえからな」
諦めたような言葉に乗るのは、悲しげな音。
俺はあわてて顔を上げると、土門が窓の外を見ながら
ぽつりとつぶやいた。
「…さっき、イナズマジャパンが到着したらしい」
「っ」
思わず、息をのむ。
「たぶん、秋も一緒だ」
ああ、アキ、アキ。
俺の鼓動は、先ほどとは違うリズムで鼓動を刻みだす。
秋、秋。
君にそばにいてほしい。
*********************
アキ、アキ。
練習をしていても、宿舎のベットに横たわっていても
病院の検査の間でもずっと、オレは秋の事ばかり考えるようになった。
と、同時にオレの中に別の感情が育ち始めているのを自覚してしまう。
その言葉を必死になって否定しようとすればするほど
まとわりつく思考。
秋、秋。
あの柔らかい体を、もう一度思い切り抱きしめたい。
あの大きなやさしい目でオレを見つめてほしい。
かわいらしい唇からこぼれる言葉で、オレを励ましてほしい。
小さくて、柔らかい手でオレの手を取って体温を、感じさせてほしい。
病室の白い壁に囲まれ、少しずつ抜かれていく赤い血を見ながら、
オレは叶わぬことを切望する苦しさに身を焼いた。
「いいのかよ、会いに行かなくて」
第一試合開始まで、残すところあと3日となったころ
土門が焦れたように俺に声をかけてきた。
「…」
行きたい。
今すぐにでも。
だが、秋が彼と笑いあう姿を見たらきっと今の俺は折れてしまう。
今はそういった確信めいた予感だけがはっきりと自分の中に見えていた。
俺は、嫉妬している。円堂に。
何もかも持っているくせに、秋の気持には何も気付かないで
ふりまわすだけ振り回す癖に、才能とやる気と輝くばかりの
サッカーへの情熱と未来を持っている、円堂に。
今の俺には何もないのに
未来も、サッカーへの明日も、…秋も。
黙って目を伏せる俺に、土門は困ったようなため息をそっとついた。
「一之瀬、秋に会いたいんだろ?倒れた時にうなされて呼んでたんだぞ、 …秋のこと」
俺は僅かに目を見開いて。そして薄く笑うしかできなかった。
病院は今日も消毒の匂いと、さわさわとした喧騒に包まれている。
練習の後に、そっと宿舎を抜け出して俺は定期的な検査に訪れていた。
「いいかげんにするんだ、カズヤ。リミットは迫ってるんだぞ!」
ドクターの声は日に日に怒気をはらんでいく。
それでも俺は首を縦に振ることはできない。
「まだ、戦いたいやつがいるんです」
「命を削ってまですることでは…!」
「…俺は、一度死んだんです。でも蘇らせてくれた人の為に
俺は命を使いたい」
「そんなに若いのに…未来も命もかけるなんて…馬鹿げている!」
ドクターは机にこぶしをどん、と叩きつけた。
「分かっています、でも。」
俺は膝の上で握った手をさらに硬く握る。
「…スポーツにかける人種の、意地にはいつも困らされる」
ドクターはため息をついて、また明日にも来るようにと
俺に背を向けながら言った。
(リミット、か)
もしオレに目に見える目盛でもついていれば、今まさに
ゼロに近づくところなんだろうか。
当然人間にそんな指針はない。
だが、自分でも感じるその終わりに、知らずごくりと唾を飲んだ。
サッカー生命が尽きるのが先か
俺の生命が尽きるのが先か
ぼんやりと歩く脚は、無意識に俺をいつも通りの道に運んで行く。
秋、今、君はどこにいる?
円堂と一緒にいるの?
イナズマジャパンは順当に勝ち進んでいる。
次に当たるのは…そう、俺達アメリカ。ユニコーン。
秋、その時君は何を思うんだろう?
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