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ジャンルごちゃ混ぜSSブログ* テニプリ(リョ桜)* イナズマイレブン(一秋中心、NLのみ) イナイレでは一秋中心にいろいろ 感想とか好き勝手 今はとにかく一之瀬が好き
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私は果てしないそこに、その唯一を探して





たったひとつ


夜空が広がっている。
今はもう使われないキャラバンの屋根の上にアキは座っていた。
サッカー部の合宿が、行われているとは思えないほど静かな校内。
秋は、ちいさくため息をついた。

雷門中はFFIが終わっても、サッカーサッカーの毎日だ。
あれから注目が高まり、サッカー部に入部するために
他校からわざわざ転校までしてくる者までいた。
夏未はあれ以来、サッカー部の仕事よりも理事の仕事が忙しく
こちらには顔を出せなかった。
冬花も自分の学校に帰り、増えてしまった部員の
世話は実際、秋と春奈の二人だけでこなしていた。
連日の激務に春奈は疲れ果て、すっかり寝入っている。

秋は疲れ過ぎているのか、眠れない自分に苦笑して
校庭に調整のために出されてあったキャラバンによじ登っていた。

夜空を見上げると、星がチカチカとまたたいている。

目を閉じて、秋は宿舎で寝息を立てている
あのGKの顔を思い浮かべた。
そして彼がいつも大事にしているあの、ペンダントも。
長い髪のきれいな笑顔のあの子がくれた、あのペンダント。

それを思い出し、秋は硬く目を閉じた。


そして、次にまなうらに蘇ってきたのは、彼の笑顔だ。
懸命に、まっすぐに、自分にぶつかってきてくれた彼。

「…一之瀬くん」


口に出してみた途端、ふいに涙が込み上げてきた。
秋はあわてて顔を伏せてみるが
それは止まるどころか、更に大粒の涙になってこぼれ始めた。

自分はあの時の彼の言葉の、本当の意味を分かっていなかった。
心底、自分を求めてくれていたのだと気付いたのは
日本に帰って来てからだった。
反芻するように、ゆっくりと思い出すと
更にその意味の重さに、秋の心は焦燥感でいっぱいになった。


ポケットから、携帯を取り出す。
星明かりだけを頼りに、ボタンを押す。
暗闇に浮かぶその名前が、まるで今の秋をかろうじて導いている
希望の光に思えた。

今、アメリカは何時だろう。

携帯の時計を見ると、12時を過ぎていた。
だとすると、あちらは朝の6時頃だろうか…
今かけても、きっと寝ぼけた声なんだろう。

想像して、クスリと笑いがこぼれた。
泣きながら笑う自分がおかしくて、さらに笑いがこぼれる。


(一之瀬くん、私、きっと)


あの真剣な瞳を、星空に探してみる。
たったひとつ輝く、何物にも代えがたい、大切な輝きを。


稲妻町の夜空はたくさんの星を抱えて
大きく果てしなく秋の上に広がっていた。

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