ジャンルごちゃ混ぜSSブログ*
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感想とか好き勝手
今はとにかく一之瀬が好き
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今日も稲妻町の空は、入道雲を従えてどこまでも青空だ。
一之瀬一哉は、滴り落ちる汗をユニフォームの短い袖で拭いながら
夏らし過ぎる空を恨めしそうに見上げた。
(あついなあ…)
日本の夏は、こんなに暑かっただろうか?
くるりと回りを見渡すと、FFIを共に闘ったマークも
敵として対戦した円堂も暑さにぐったりとして閉口しているようだった。
FFIが終わり、世界各国の選手たちは
自然にこの日本に集まってきていた。
ただ、またみんなと、円堂と戦いたいという一心で。
そして、会えば何も言わなくてもすぐにサッカーの野試合が始まった。
ただ一之瀬はそれ以上の目的をもって、この稲妻町に戻ってきていた。
(秋、…会いたい)
FFIでの苦しみを思い出すたびに、
やはり自分の胸の奥に疼く想いに突き動かされてしまう。
あの時、自分の人生が終わるかもしれないという絶望の中で
秋という希望を見出した。
自分のわがままだとわかってはいても、
彼女に想いを伝えることしかできなかった。
ただ、彼女が欲しかった。
やさしい彼女を泣かせても。
一之瀬はあの涙を思い出し、苦しさに思わず目を伏せた。
胸の奥に刺さったとげの痛みが、消えていない。
「みんなー!給水の時間よー!」
明るい声に振り向くと、白いワンピースをまとった秋が両手に重そうに
ペットボトルを抱えて笑っている。
各国の選手たちは、その目をぱちぱちとまたたかせた。
「あ、秋!?」
一之瀬の声に、秋はふわりと笑って見せた。
その細い体で、この選手分のペットボトルを抱えてきたのだろうか
重そうに抱える白くて細い腕が、やけに痛々しく見える。
一之瀬は、茫然とした面持ちで秋の前に佇んでいた。
ぞろぞろと集まる選手たちに、秋はいつものように
当たり前のようにペットボトルを手渡していく。
その光景に、まるで今でも自分が雷門中にいるかのような錯覚を覚える。
夏の日差しの中で、秋の白い頬が輝くように見えて、一之瀬は思わず目を伏せた。
「はい、一之瀬くん。給水しないと、もたないよ」
いつもの笑顔で、秋は最後のペットボトルを差し出す。
その笑顔にとっさに言葉がでない。
一之瀬は、あの時とは違う心臓のざわめきに呼吸をみだしていた。
心の棘が疼きだして思考が止まる。
どうしよう、何を言えばいい…一体何を。
秋は、差し出したペットボトルがいつまでも受け取られないことに
少し眉をひそめ、悲しげな顔になる。
その表情にはっとして、一之瀬はあわててペットボトルを受け取った。
「あ、ありがとう、秋」
「ううん、どういたしまして」
一旦、アメリカに帰ったものの、秋への思いに突き動かされて
衝動的に日本へ来てしまった。
だが、いまさら何を言えばいいのか。
言いたいことはある、
確かに自分の中にある。
だが、その台詞は今は彼女を困惑させるだけなのを、
痛いほどに分かっていた。
(今度、口にすれば、壊れてしまうかもしれない)
一之瀬は、ペットボトルから伝う冷たいしずくに目をやりながら、
唇をかみしめた。
「一之瀬くん」
「…え」
「あのね」
「うん」
「…あの」
「…」
白いワンピースが、夏の暑い風をはらんで揺れる。
それを秋の白い手が、きゅっとつかんだ。
夏の日を浴びて、白い手が輝くように見えた。
一之瀬は、引き寄せられるような錯覚に目を離せない。
「私…あの後、よく考えたの。それで」
秋の瞳が揺れている。
必死になって訴えようとしている表情に、一之瀬の胸が締め付けられる。
「今はまだ…うまく言葉がみつからないけど」
「アキ…」
「私、私」
「アキ」
「一之瀬くんのこと、嫌いじゃない。…大好き」
「やめて、アキ」
「本当に、好きなの」
「アキ!!」
一之瀬は思わず、その細い腕をつかんでいた。
ちいさく震えている自分の手が情けない。
「…今は、まだ聞きたくない」
「一之瀬くん…。あ、ち、ちが」
「いい、アキ。無理しないで」
「違うの!」
秋の言葉をさけるように、一之瀬は顔をそむける。
否定の言葉を、決定的な言葉を聞く事が怖かった。
「お願い、一之瀬くん」
「ごめん、アキ。オレ、本当にダメなやつなんだ」
「いち…」
「まだ否定の言葉を聞けるほど、オレは強くないんだよ」
「聞いて!?」
「…アキ、大好きだよ」
そういうと、一之瀬はつかんでいた細い手に口づけた
秋がはっと息を飲み、頬を薄い紅色に染める。
「好きだよ」
そう言って見つめた秋の瞳は、なじんだ町の空を映して
恐ろしいほどに美しく見えた。
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